2009年にベトナム損保業界において、日本企業で初めて100%独資の現地法人を設立した三井住友海上。
 井口様ご自身も強くご関心を持っておられるベトナムの、将来のあるべき姿から損保業界の展望まで、深いご見識を伺うことができました。

 

 
  

井口 武雄 (いのくち たけお) 
三井住友海上火災保険株式会社
シニアアドバイザー 

1942年生まれ 長野県出身

1965年 東京教育大学法律政治学科卒業

1965年 大正海上火災保険株式会社入社

1990年 三井海上火災保険株式会社
    火災新種業務部長

1993年 取締役火災新種商品企画部長

1994年 常務取締役

1996年 取締役社長

2000年 最高執行責任者(CEO
    取締役会長、取締役社長

2001年 三井住友海上火災保険株式会社
    取締役会長共同最高経営責任者

2006年 取締役会長執行役員

2006年 取締役会長執行役員退任

2007年 シニアアドバイザー(現職)

 

 

 

 


  

レロンソン
 
この度は対談の機会をいただき、誠にありがとうございます。本日は宜しくお願いいたします。




 

井口様
 
私は、ベトナムを一発で好きになりました。私が初めてベトナムへ行った1995年の5月に見た一家総出の農作業風景が、自分が子供の時経験した風景と全く同じだったからです。
 今、日本では、家族が一緒になって力を合わせて同じことを行う機会が減っています。家族同士の会話すら少ない状況です。家族全員で共有できるものがあって初めて、家族の絆が保たれ、お互いにわかりあうことができるのです。残念なことに、日本ではそれが薄れてきています。私は、ベトナムの農作業風景に非常に強い家族の絆を感じました。




 

 

レロンソン
 
私自身も、家族の絆、助け合いの経験が強く残っています。現在もベトナム人が家族を大切に思う気持ちはとても強く、都市部においてもそれは変わりません。ただ私は、ベトナム人と日本人の家族観は根本では近いと思っています。

 昨今、日本政府がアジア重視の方針を打ち出し、ベトナムとの連携も更に深まろうとしていますが、日越の連携における大切なポイントを教えていただけますか?

 

 

井口様
 日越は、心と心が結びつきやすい国同士だと考えています。
 両国は共に「海」の国です。お互いに海岸線が長く、歴史的には、海上輸送を中心としており、異なった文化に接するためには海を渡らなければならない国として、同じ境遇にありました。両国は海を隔てた隣の国とも言えます。地理的環境は文化に大きく影響します。この点だけをとってみても、日本人とベトナム人が根本では似ており、強い連携が期待できると思います。
 さらに、ベトナムは経済発展に関して情熱をもっており、政治が安定しています。
 
 連携のポイントとしては、3つ挙げられます。
 1つは、製造業関係で言えることですが、ベトナムに市場、製造機能、開発機能をつくることが両国の価値を上げることにつながります。低い労働賃金にメリットがあるという考えだけではなく、開発・製造・市場を組み合わせた経済モデルの構築を目的とした投資を行うべきだと思います。
 2つ目は、サービス産業です。観光、医療、教育、そして金融の分野で、日本と同じようなモデルをつくりあげることができるのではないでしょうか。特に教育分野は、日本で働くための人材育成を行っているアクティブリッジさんの活動に、既に大きな価値が生まれています。
 さらに、3つ目は、文化の交流です。文化交流と言うと、音楽、絵画、芸能といったことが挙げられます。それも大事ですが、私は、「食」も重要だと考えています。生活・文化の源泉である「食」において、日越間で、高級なものではなく、日常食レベルでの交流が盛んに行われることが必要です。
 また、民話、童謡、絵本といった、お互いの生活の中に生きている文化の交流も活発にするのがよいと思います。

 各方面で連携が可能である国はそんなに多くありません。そういった意味で、日越の多面的な連携は今後更に強固にしていかなければいけません。